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修理録(15)
「金継ぎを」とご依頼くださるお客様のなかには、茶道の勉強をされている方が多いです。器への知識・愛着も強く、お茶席のお話をうかがうのが楽しいです。
この柘榴型蓋物の持ち主の方もお茶を習われているとのこと。修理跡が目立たない弁柄漆(朱色の漆)の仕上げと迷われていましたが、金仕上げで承りました。
漆仕上げは金属粉を使わない分、費用が押さえられる利点があります。また、ものによっては継いだ跡が目立たず、元の状態に近い仕上がりになります。(白磁などは難しいですが。)
対して、金仕上げはやはり華やかな印象になりますね。「傷を目立たせるなんて」と思われるかも知れませんが、お茶の世界では古くから金継ぎの跡を「景色」と呼んで鑑賞してきた歴史があります。壊れるのは悲しいことですが、ひょっとするとちがった良い表情を生み出すかもしれない、そんなおもしろみもあります。
黒の小鉢もいっしょに修理に出していただきました。お母様から引き継いだものだそうです。世代を超えて使われる器は幸せですね。